ことば怪獣の娘~お父さんはアスペルガー症候群(多分)

アスペルガー症候群(多分)の父親を持つ私が、もっと楽に生きるにはどうしたらよいか考えるブログです

私の知る父性

自分に子供が出来て驚いたこと。

父親は子供を守りたいらしい。

 

雷や節分の鬼に怯える我が子へ、夫がかけた言葉に私は衝撃を受けた。

曰く「鬼が来ても、お父さんがやっつけるから大丈夫だよ。お父さんとお母さんがお前を守るからな。」そう言って小さい体を抱きしめるのだ。ドラマの演出かと思った。

 

違う違う。こんなの作り物だ。

 

「うん、そんなんじゃ鬼に喰われちまうな。だから良い子にして、賢くしてねぇと。鬼に喰われるな。うん。悪い子じゃあ、なぁ?仕方ねぇよな。喰われても。うん。」

 

 

そうだ。私が知る父性はこれだ。

 

オオカミ人間や人食い妖怪、魔女や鬼の話。夜ごと紡がれる昔話は、幼いながらに私の未来のようだと思った。

 

私が何か大きな失敗をしたら、本当はオオカミ人間の父や、本当は山姥の母に食い殺されると思っていた。

 

物語の主人公たちは知恵や勇気で機転を利かし、ピンチをすり抜ける。大変素晴らしいのだ。生きる力よ、ビバ!レジリエンス

 

私には出来そうもないと思った。というより、私には無理だなと思った。自分がピンチをチャンスに変えられるなんて思えなかった。そんな自信は生憎育まれてはいなかったのだ。だから、自分より大きい人たちの逆鱗に触れないように、機嫌を損ねないように。そうして細々頑張ろうと決意した。良い子にしていたら、生かしておいてもらえるかもしれない。食べるのをやめてくれるかもしれない。

 

 

夫の真似をして幼い我が子を抱きしめる時、私の心は静かに沈んでいく。諦めの暗がりの中で震えるかつての私をいくら抱きしめるイメージをしても、小さなその子は微笑まない。欲しいのはこの腕ではないことはわかる。でもどうしたらいいのかわからない。